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歯科医院が助成金活用するうえで知っておきたい予備知識

歯科医院が助成金活用するうえで知っておきたい予備知識

歯科医院で有効活用したい助成金について、助成金の目的や補助金との違い、助成金活用する際の注意点などを、年間数百万円単位で助成金獲得実績のある現役の歯科事務長が解説いたします。

1.助成金の目的

助成金の目的


助成金を受給し歯科経営に活用する上では、助成金の「目的」を正しく理解しておくことが重要です。

助成金を活用している歯科医院の事例でもご紹介させていただいたように、助成金は、「雇用(採用)」や「職場環境の改善(働き方)」「生産性向上(残業削減やスタッフ教育)」など、「人」に関する分野の取り組みに対して支給されます。

これは、助成金が雇用保険法に基づく保険制度の1つであることから、雇用の安定や職場環境の改善、また家庭と仕事の両立支援などを目的として交付されるという名目になっております。

助成金の支給要件は、仕事環境の改善に寄与するものが多い傾向にあります。スタッフの雇用安定や、働きやすい職場作りの実現といった役割も担っているのです。助成金を活用した分だけ労働環境が整備されるので、スタッフのモチベーションアップにもつながるでしょう。

2.助成金と「補助金」の違い

助成金と「補助金」の違い


助成金とよく似た制度・名称で紛らわしいものが「補助金」です。
受給できる条件や申請方法、受給の難易度、受給額など、助成金と補助金では異なっている点があり、混合されがちですが助成金と補助金は全く別の制度です。

助成金とは、雇用の安定や職場環境の改善などを目的とし、取り組みを行った事業主に対して支給される、返済不要のお金を指します。厚生労働省が管轄しており、原資は雇用保険料です。

補助金とは、国・地方自治体が掲げる政策目標に沿った活動を行う事業者を支援するために支給されるお金で、財源は税金です。補助金は実際に支払ったお金の一部または事業全部の費用に対し、お金を補助する仕組みとなっています。事前に補助金をもらって費用にあてることはできません。

助成金と補助金は混合されがちですが全く別の制度です。次の表で、補助金と助成金の違いを確認していきましょう。

助成金補助金
財源雇用保険料税金
目的・雇用の安定
・職場環境の改善
・スタッフの能力アップ
・生産性の向上
・創業促進
・新規事業の促進
・雇用の安定
申請時期通年可短期間であるケースが多い
難易度要件・期日を遵守していれば、支給される可能性は高い・計画書を提出し、審査をパスしなければならない
・採択数に限りがある

例えば、歯科診療で使用するマイクロスコープ・ユニット・CTといった設備を購入した際に活用できる補助金制度として、「ものづくり補助金」があります。ただし、この制度は補助金なので前述したように事前にお金を受け取ることができない点、あらかじめ注意してください。

補助金の公募要領は毎年変わり、申請締め切り日も明確に決められています。気になる補助金がある場合は、必ず公式ホームページを参照して要件をチェックしましょう。

3.歯科医院が助成金を活用する際の注意点

歯科医院が助成金を活用する際の注意点


歯科医院が助成金を受け取れるようにするためにも、助成金申請のポイントを押さえることが重要です。次に、助成金申請時の注意点を5つピックアップし、説明します。

3-1. 制度が複雑かつ毎年要件が変わる


前述した通り、助成金は年1回4月に改訂されます。名称が同じ助成金であっても、前年度と要件が異なることもあり、制度そのものが複雑です。

申請書類の量も多く、専門用語を理解する必要があります。助成金の提出代行は社会保険労務士の独占業務です。経営者自身で準備するのが難しいと感じたら、早めに相談することをおすすめします。

3-2. 受給まで時間がかかる助成金もある


要件を満たした後、申請書を提出してから支給が決定するまでに数か月~1年以上かかるケースもあります。経営が苦しいからといって、助成金のみをあてにするのは危険です。安定した経営を維持するためにも、助成金は補助的なものとして捉えておくのが良いでしょう。

3-3. 申請期限は厳しく定められている


助成金の申請期限を過ぎると、書類が完璧であっても受給できません。書類に不備があったときでも十分対応できる時間を確保するために、要件を満たしている場合はなるべく早めに書類を提出した方が良いでしょう。

申請し損ねることがないようにするためにも、カレンダーのリマインダーをセットするなど、進捗管理を徹底するのがポイントです。

「両立支援等助成金: 育児休業等支援コース」の例をみていきましょう。

育児休業時の代表的な要件は以下の通りです。

  • 育児休業の取得、職場復帰についてプランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること。
  • 育児に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で育児の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること。
  • プランに基づき、対象労働者の育児休業(産前休業から引き続き産後休業及び育児休業をする場合は、産前休業。)の開始日の前日までに、プランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3か月以上の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含む)を取得させること。

引用元:厚生労働省・都道府県労働局「2022年度 両立支援等助成金のご案内」

助成金はコースが細かく分かれており、申請時に必要な書類には提出期限も設定されています。決められた要件を指定の期日までに満たせない場合、助成金は不支給となるため要件だけでなく提出期限にも注意が必要です。利用したい助成金があれば、支給要綱を熟読し、抜け漏れがないよう注意しましょう。

3-4. コストがかかる場合がある


助成金の支給要件を満たすために、新しい制度の構築や機器の導入に費用が発生するケースもあります。助成金を目的として、不必要な機器を購入していないでしょうか。制度・機器を導入して働きやすい環境が作れるのか、費用対効果はあるのかなど慎重に検討してください。

3-5. 万が一不正受給した場合はペナルティも


不正受給を行うと、下記に挙げる罰則が適用される恐れがあります。また、不正受給が発覚した場合には、会社情報が公表されるので、社会的信用を失うリスクもあります。助成金の不正受給は犯罪であると理解し、絶対に行ってはなりません。

  1. 支給前の場合は不支給となります。
  2. 支給後に発覚した場合は、請求金の納付が必要です。
  3. 支給前の場合であっても支給後であっても、不正受給による不支給決定日または支給決定取消日から起算して5年間は、その不正受給に係る事業主に対して雇用関係助成金は支給されません。
  4. 不正の内容によっては、不正に助成金を受給した事業主が告発されます。
    (詐欺罪で懲役1年6か月の判決を受けたケースもあります。)

引用元:厚生労働省発行「各雇用関係助成金に共通の要件等」

4.歯科医院の助成金活用について

歯科医院の助成金活用について


助成金の申請は煩雑な手続きが必要なものの、受給できれば有用な資金となるでしょう。助成金は申請期日が決められているので、申請し損ねることがないように注意してください。

自院で活用できる助成金があるか気になる方は、社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

なお、「まるごと事務長」では、助成金申請・受給が得意な社会保険労務士事務所をご紹介してご支援が可能ですので、お気軽にお声がけいただければ幸いです。

記事の監修者


まるごと事務長 担当コンサルタント M

年間医院収入2億円 スタッフ数30名の現役事務長

人材採用、離職率改善、教育体制づくり、オペレーション改善、助成金活用によるコスト削減などを得意とし、訪問診療の立ち上げ・採算化まで、院長の右腕として経営面の実務を幅広く担っている