TEL092-406-7073

歯科医院のキャンセル率を下げる7つの対策ー後編ー

歯科医院のキャンセル率を下げる7つの対策ー後編ー

キャンセル率を下げるためには、まず「キャンセルとは何か」「キャンセルされた場合、医院はどうなるのか」「キャンセルを防ぐために患者にどのような説明や指導をすればよいのか」といった基本的な知識をスタッフ全員が共有することが大切です。

そして患者教育や受付対応の改善、予約調整の最適化など、一つずつ対策を実践していきます。

本記事では現役の歯科事務長が、経験と実績に基づいた7つの具体的な対策とITを活用した施策を紹介します。

歯科医院のキャンセル率を下げる7つの対策

歯科医院のキャンセル率を下げる7つの対策

キャンセル率は適切に対策することで効果的に減らせます。ここでは、具体的な対策を7つ紹介します。

  1. スタッフ教育の徹底
  2. 患者教育の強化
  3. 受付対応の改善
  4. 歯科医師による説明と患者教育
  5. 予約調整の最適化
  6. 初診時における丁寧な説明
  7. 患者層の入れ替え

①スタッフ教育の徹底

キャンセル率を下げるためには、まずスタッフ教育が重要です。特に、歯科衛生士や歯科助手には以下の3点を理解させる必要があります。

  • キャンセルとは何か
  • キャンセルされた場合に医院はどうなるのか
  • キャンセルを防ぐために、患者にどのような説明や指導をすればよいのか

これら3点をスタッフがを理解し、患者への指導ができるようになれば、キャンセル率は自然と下がっていくでしょう。

②患者教育

患者指導とは、患者が来院する理由付けや動機付けをすることです。具体的には、以下の4つのポイントに焦点を当てて指導を行います。

受診の優先順位を高める

1つ目は、患者の中で診療に対する優先順位を高めることです。仕事や家事など、忙しい日常の中で受診を後回しにしてしまう患者は少なくありません。放置したらどうなるのか理解してもらい、受診を最優先事項として捉えてもらう必要があります。

来院の理由・動機付けの強化

2つ目は、患者が「来院しなければいけない」と感じるような理由付けをすることです。たとえば、治療を中断するとどうなるのか、定期的なメンテナンスの重要性などを具体的に説明することで来院意欲を高めることができます。

処置への理解を深める

患者が治療内容を理解していないと、途中で通院をやめてしまうことがあります。たとえば、神経を抜いた後に根管治療をしないと、再び感染を起こしたり、歯が割れてしまうリスクがあります。しかし、痛みや腫れが治まると、治療が完了したと勘違いして通院をやめてしまうケースも少なくありません。

このような事態を防ぐためには、患者に治療内容やその後のリスクなどを丁寧に説明し、治療の重要性を理解してもらうことです。その手段として、「治療ノート」を患者さんにお渡しし、治療経過を記載して「見える化」を進める歯科医院もあります。これも治療の重要性を高め、来院理由と動機付けを強化する1つの対策ですね。

ゴールを見せる

4つ目のポイントは、「ゴールを見せる」ことです。これは、治療終了時期やその後のメンテナンス開始時期を指します。

具体的には、

  • どのような治療を行うのか
  • 治療の順番はどうなっているのか
  • 治療期間はどれくらいかかるのか
  • いつ治療が終了するのか
  • いつからメンテナンスが始まるのか

などです。

特に、メンテナンスは継続的なケアが必要となるため、その重要性や目的を患者に理解してもらうことが大切です。

これらの4つの要素を患者にしっかりと伝えることで治療に対する理解が深まり、積極的に来院するようになるでしょう。

③受付対応の改善

受付スタッフは、キャンセル率を下げるための重要な役割を担っていると言えます。

受付スタッフが患者との関係性を築き、しっかりとコミュニケーションを取ることができれば、キャンセル率は下がります。

④歯科医師による説明と患者教育

衛生士や歯科助手がいくら丁寧に説明しても、患者によってはなかなか聞き入れてくれないことがあります。しかし、同じ内容でも歯科医師から説明されると、すんなり受け入れてくれる患者も珍しくありません。

そのため、歯科医師自身がキャンセルが医院に与える影響やその予防策を理解し、患者教育をしていく必要があります。

⑤予約調整の最適化

予約は患者ごとに適切な間隔を考慮する必要があります。たとえば、キャンセルリスクが高い患者に対して「空いているから」という理由だけで、すぐに次の予約を入れてしまうのは避けましょう。

1ヶ月後や3週間後など、少し間隔を空けて予約を入れていきます。これは、患者自身に予約日を意識させ、キャンセルを減らすための工夫です。患者から「そんなに先になるのか」「予約が取りにくい」などの不満が出ることもあるかもしれません。しかし、ここで特定の患者を優遇してしまうと、ほかの患者の不満につながります。

予約を入れる際は、あくまでも公平性を保ち、ルールに則って対応しましょう。とはいえ、キャンセルが多い患者と少ない患者を全く同じように扱う必要はありません。過去のキャンセル履歴などを参考に患者ごとに合わせた予約調整が必要です。これは差別ではなく、あくまで区別です。

⑥初診時における丁寧な説明

初診時のカウンセリングは、キャンセルポリシーを伝える場ではなく、治療内容をしっかりと説明する場であるべきです。

患者の現在の口腔内の状態、今後の治療計画、治療期間、目指すゴール、治療に伴うリスクなどをわかりやすく説明しましょう。患者が安心して治療を受けられるよう、疑問や不安な点にもしっかりと耳を傾けることも重要です。

その上で、「キャンセルはご遠慮ください」「当院ではこのようなキャンセルポリシーを設けています」と伝えるだけで十分です。

治療内容も説明せずにキャンセルポリシーだけを伝えても、患者は納得しませんし、カウンセリングの意味がありません。

初診時のカウンセリングは、あくまで患者との信頼関係を築くための場であることを忘れず、丁寧な説明を心がけましょう。

⑦患者層の入れ替え

キャンセルを繰り返す患者に悩まされている歯科医院は少なくありません。地域性や過去の慣習でキャンセルを受け入れてきた結果、経営が苦しくなっているケースもよく耳にします。このような状況を改善するには、勇気を持って患者層を入れ替える必要があります。

具体的には、きちんと来院してくれる患者を優先的に受け入れ、適切な治療を提供することに注力すべきです。

誰彼構わず患者を受け入れることは、医院の成長を妨げる原因となります。キャンセルが多い患者に対しては、「診れません」と断るのではなく、「○月○日なら診れます」と、かなり先の予約日を提示するなどの対応が有効です。そうすることで、患者自身が他のクリニックに行くことを選択する可能性が高まります。

患者を入れ替えることは、クリニックにとって適切な患者を受け入れるチャンスです。合わない患者を無理に受け入れるのではなく、その患者に合う医院に転院していただくのがお互いにとって幸せになります。

患者が自分に合ったクリニックを選ぶことができるよう、医院側がどのような患者を診たいのか、どのような治療をしたいのかを深く掘り下げて考え、方針を明確にし、情報発信していくことが大切です。

ITを活用したキャンセル対策施策

ITを活用したキャンセル対策施策

ITを活用することで、キャンセル率を効果的に下げられます。

①予約管理システム導入のメリット

ある歯科医院では、紙の台帳でキャンセルの管理をしていました。当日キャンセルは赤、事前連絡は黄色でマーカーを引き、別のノートにキャンセルの人数や名前などを記録していました。

経験豊富な受付の方は、この記録をもとに次回予約時に注意すべき患者や予約を受けない方がよい患者などを判断していました。

しかし、このような属人的な管理方法には限界があります。経験が浅いスタッフには判断が難しく、担当者が変わると情報が引き継がれない可能性もあります。

そこで、予約システムの活用が有効です。予約システムを使えばキャンセルの種類や理由を簡単に記録・管理でき、誰でも効率的にキャンセル対策を行うことができます。

②オンラインとオフラインの融合

重要なのはオンラインとオフラインの融合です。たとえば、予約システムを導入してリマインドメールを送るだけでなく、メールを見ない患者には個別に電話連絡をするなど組み合わせることで、より効果的にキャンセルを防げます。

予約システムを導入すれば、全員に電話をかける必要はありません。リマインドメールで来院する患者と、電話連絡が必要な患者を分類し、それぞれに合わせた対応をすることで、効率的にキャンセル率を下げることができます。

ただし、ITツールは、あくまで情報を提供するものであり、最終的な判断は人間が行う必要があります。

たとえば、キャンセルが多い患者でも、高齢や持病など、やむを得ない事情があるかもしれません。ITツールで得られた情報を参考にしながら、患者一人ひとりの状況や背景を考慮し、丁寧な対応を心掛けましょう。

③オフライン対策でさらにキャンセル率を下げる

リマインドはメールだけでなく、手書きのハガキも有効です。手書きのハガキは、患者に喜ばれることもあります。

ITツールを活用すれば患者ごとに最適なリマインド方法を選べます。メールや電話、手書きのハガキなど、それぞれの患者に合った方法で来院を促しましょう。

ITツールは、キャンセル率を下げるための強力な味方です。ぜひ、あなたの医院でも活用してみてください。

キャンセル率を下げた事例

キャンセル率を下げた事例

無断キャンセルの悩みを解決するヒントが、言葉の使い方に隠されているかもしれません。

ある歯科医院では、「約束」という言葉を使うようにしたところ、キャンセル率が20%から10%へと半減しました。

「約束」という言葉には、単なる予約以上の重みがあります。患者は、約束を守るという意識を持ち、より確実な来院につながるのです。

もちろん、キャンセル対策はこれだけで十分ではありません。ITツールを活用したリマインドや、患者とのコミュニケーションを大切にするなど、さまざまな工夫が必要です。

これらの対策は、決して簡単な道のりではありません。しかし、私たちと一緒に取り組めば、必ずキャンセル率を下げることができます。

まとめ

まとめ

歯科医院のキャンセルは、売上減少だけでなく、貴重な診療機会の損失やスタッフのモチベーション低下など、さまざまな悪影響を及ぼす深刻な問題です。

本記事で紹介した7つの対策に加え、キャンセル状況の分析やキャンセル理由も把握することで、より効果的な対策を立てられます。

キャンセル率は、決して一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、諦めずに継続的に取り組むことで必ず成果は現れます。

私たちは、あなたの医院のキャンセル率を下げるために必要な施策の実行を現場でご支援します。お気軽にご相談ください。

記事の監修者


まるごと事務長 担当コンサルタント M

年間医院収入2億円 スタッフ数30名の現役事務長

人材採用、離職率改善、教育体制づくり、オペレーション改善、助成金活用によるコスト削減などを得意とし、訪問診療の立ち上げ・採算化まで、院長の右腕として経営面の実務を幅広く担っている