クリニック現場力&経営力診断サービスは、半日かけて現場を訪問し、ヒアリングと100項目以上にわたるチェックを行います。この診断を通じてクリニックの現状を明確にし、具体的な改善点を見つけ出すことが目的です。
本記事では、この診断サービスの具体的なチェック項目やメリットについて解説します。クリニックの運営を効率的に改善し、安定した経営を実現するためのヒントを見つけていきましょう。
クリニック診断の項目とチェック内容
クリニック現場力&経営力診断サービスは、多角的な分析を通じてクリニックの現状を把握し、効率的な経営改善をサポートするために行われます。診断内容は広範囲にわたり、以下のような項目をチェックします。
- 人材採用と労務環境
- 設備と機材(ハード面)
- 人員配置
- 売上
- 導入
- マネジメントとスタッフケア
- 診療
- 衛生環境
- コスト
- カルテ内容
- 外部との連携
- スタッフレベル
人材採用と労務環境
人材採用
近年、完全週休2日制又は週休3日制の導入や有給休暇の管理など、働きやすい環境づくりが進められています。このような取り組みは、従業員の満足度を高めるだけでなく、優秀な人材を惹きつけることにもつながります。
特に、都市部のクリニックでは、地方からの人材を積極的に採用するところも多いです。引っ越し費用の支援といった施策が入職の後押しとなっており、導入しているところが増えています。
採用時の給与水準もチェックポイントです。地域の相場と比べて適正な水準であるかどうかが、人材確保に大きな影響を与えます。さらに更に自院の給与がを大都市圏のクリニックと比較することも重要になりつつあります。
労務環境
また、健康保険料など福利厚生について、従業員に負担がかからないよう配慮する必要があります。一般的に健康保険料は会社と従業員で折半しますが、一部のクリニックでは従業員に全額を負担させており、そういった場合は離職率が高くなる傾向にあります。
従業員の定着率を評価する指標として、離職率の分析も欠かせません。離職率が高ければその原因を分析し、労働環境の改善策を立てる必要があります。
しかし、経営者目線だけでは気づきにくい点も多いです。第三者による評価や提案を取り入れることで新たな視点が加わり、クリニック運営の改善が期待できます。
設備と機材(ハード面)
機材
最近、口腔内スキャナーやマイクロスコープ、セレックを使用した治療がトレンドです。
根管治療の際に肉眼ではわかりにくい部分も、マイクロスコープを使えば正確に確認できるため、治療の質が向上します。
私たちが経験した中でも、これらの技術を導入しているクリニックでは、患者満足度が高く、再治療のリスクも低減しています。マイクロスコープを導入するクリニックは全国で8,0008000件を超え、2025年までに導入するクリニックは10,00010000件に達すると予想されています。6件に1件はマイクロスコープを導入する時代になり、患者様がクリニックを選ぶ指標クリニック選ぶ指標の1つになりつつあります。また人材採用の面でも最近、影響を与えつつあります。要は患者も働く人も「導入設備」がクリック選びの目安となっているのです。
さらに、クリニックに対し事前にどのような治療機器があるか?問い合わせるケースも珍しくありません。
クリニックの設備
また高齢者が増える中、クリニック内のバリアフリー化なども評価のポイントです。車椅子に対応できているか?ベビーカーを押して入れるか?なども多様な患者様に対応できているか?実はこれからのクリニック経営において見逃しがちなポイントですが、実は結構重要になってきます。
他院様の実例ですが、小児歯科を増やしたいと言いつつ、ベビーカーのスムーズな移動ができる配慮がありませんでした。どうして、そのクリニックが小児歯科を増患できるのでしょうのしょうか。
この診断を受け、初めてその事に気づいて下さり、小児歯科「増患」の一因となりました。
人員配置
患者数に応じて適切な人員配置を行うことが重要です。たとえば、1日80人の患者がいる場合、受付に1人しか配置していないと業務に遅れが生じ、患者の不満が高まってしまいます。
また、歯科衛生士の人数がユニット数に見合っていないと、1人当たりの負担が過重になり、疲労やミスにつながる恐れがあります。
適切な人員配置は、業務の効率化や収益性の向上だけでなく、従業員のモチベーションやパフォーマンスにも大きな影響を与えるのです。
人手不足は従業員のストレスを高め、離職率の上昇にもつながりかねません。一方で過剰な人員配置は経営を圧迫する要因にもなり得ます。経営者としては中長期的な視点に立ち、患者数の推移や診療内容に合わせて、適宜人員配置の見直しが必要です。
診療内容と売上
チェアあたり売上
クリニックの収益を最大化するためには、チェア1台あたりの売上高を適正水準に保つことです。
たとえば、月間売上が1,000万円あったとしても、10台のチェアを運用している場合、1台あたりの収益を考えると効率的に稼働していないことがわかります。
スタッフ貢献度
また、各スタッフの貢献度を正確に把握することも欠かせません。歯科医師が自ら「40万点稼いだ」と報告していたとしても、調査を進めると、その先生が自ら手を動かして稼いだ点数は実際には15万点程度しかなく、残りの点数は衛生士がメンテナンスで稼いだものというケースも珍しくありません。このような乖離があると、給与と実際の貢献に見合わず、経営を圧迫する恐れがあります。
レセプト対応
また、細かい点ですが、レセプトの返戻がどれだけあるかも重要です。保険証の確認ミスやレセプト入力誤りなどによる返戻は、できるだけ防ぐ必要があります。
返戻への対応に時間を取られれば、その分他の業務に注力できません。返戻件数0が理想ですが、現実的には月5件以下を目指すことが賢明でしょう。
新患獲得
新患獲得ルートの把握も収益アップには欠かせません。しかし、意外にも多くの院長が新患の獲得経路を正確に理解しておらず「新患はどのルートから来ているか」と尋ねると「わからない」と答える先生方も多いです。獲得ルートを把握できれば、効果的なマーケティング戦略が立てられます。
リコール・中断・キャンセル率
さらに、リコール件数・治療中断率・キャンセル率なども大きな影響を与えます。途中で中断される患者が多ければ、治療が完了せず収益が落ちます。感覚的に「患者が来ていない」では、数字に基づいた経営はできません。状況を把握し、必要に応じてフォローアップすれば、継続来院を促し収益を安定させることができます。
導入
診療メニュー
診療メニューの充実度も患者から見た重要なポイントです。ホワイトニングやマウスピース矯正、インプラント治療など、様々さまざまな診療メニューがあれば、患者はニーズに合わせて選べるため、そのクリニックへの来院動機が高まるでしょう。
スタッフの教育研修体制
また、治療の質を左右する大きな要素として、スタッフの教育研修体制があげられます。学会やセミナーに参加し、最新の知識や技術を習得できる環境があるかどうかをチェックします。
IT活用
さらに、IT技術を活用し、診療の効率化を図っているかどうかも評価項目です。Web予約システムやカルテの電子化、キャッシュレス決済の導入など、IT化が進んでいれば待ち時間の短縮や事務作業の効率化につながり、患者サービスの向上が期待できるでしょう。
加えて、キッズスペースやベビーシートなどの設備が整っているかも重要です。こうした細かな配慮は、患者に安心感と快適性をもたらし、リピート率の向上と知人や友人の紹介にもつながります。
設備投資には多額の初期費用がかかることも事実です。しかし、良好な医療環境を整備することで、長期的には収益の安定が見込めます。コストと収益のバランスを見極めながら、戦略的な設備投資を検討する必要があります。
マネジメントとスタッフケア
マネジメント
スタッフのマネジメントは、多くの先生が苦手とする分野です。しかし、日常の何気ない会話からスタッフの気持ちを汲み取り、どう考え、どの方向に進んでいるのかを理解し、導いてあげることが重要です。
近年、一部のクリニックではライフプランナーをコンサルタントとして起用し、スタッフの将来設計を支援する取り組みが広がっています。生命保険やiDeCo(個人型確定拠出年金)、投資信託などの金融商品を提供することで、スタッフの経済的な安心につなげています。クリニックがスタッフの将来をバックアップすることで、離職防止と優秀な人材の定着が期待できるのです。
これはクリニック側にも2つのメリットが存在します。1つ目は節税効果です。様々なスタッフ支援をクリニックが一部負担することで節税ができ、賃金は上げなくても実質賃金UPしつつクリニックは節税が可能になります。
2つ目に、「辞めにくくなる」です。様々な経済的バックアップをすることで、離職時スタッフは普通に辞めるより、大きなマイナスを被ります。生命保険でも一部クリニック負担されてるため、気軽に加入したが、退職すると全て自己負担になるので、「気軽な退職」や「なんとなく退職」を予防することができます。
スタッフケア
スタッフに不満がある場合、大きな問題に発展する前に対処することが重要です。定期的な個別面談を行い、不満や悩みを早期に把握し、適切に対応することで問題の深刻化を防げます。
また、院長を含む全員で一緒に院内の掃除を行う、ランチを取るなど、横のつながりを深める取り組みも良いでしょう。毎日一定時間をスタッフとの対話に割くことで、コミュニケーションの活性化を図ることができます。
診療
治療計画・リコール管理
まず基本となるのは、患者一人ひとりに合わせた治療計画を立て、丁寧に説明を行っているかどうかが重要なポイントです。加えて、患者の症状や体調をどの程度把握し、治療に反映しているかもチェックします。
根管治療件数や義歯の作成数、むし歯治療件数など、具体的なデータから、得意・不得意分野が見えてきます。そこから、クリニック全体の治療品質向上に向けた具体的な提案が可能です。
さらに更に得意分野に合わせた集患対策も可能となります。要はクリニックと患者のミスマッチをなくすことが、このチェックのポイントとなります。
リコールの時間管理も重要です。どのようなメンテナンスの概念でリコールを行っているのかを把握することで、継続的なケアを行うための方針を見つけ出せます。
衛生環境
清潔で手入れの行き届いた空間であれば、患者に安心感と信頼をもたらすことができます。一方、ボロボロの医療機器や不潔な水回りがあれば、患者は不快な印象を抱き治療を受けることをためらうかもしれません。
私たちはクリニックに入った瞬間から、床やカウンター、待合室の清掃状態をチェックします。特に消毒エリアなど、衛生管理が重要な場所については厳しく評価します。アルジネートや石膏が散乱した消毒コーナーなどは問題です。
不潔な環境では、スタッフと患者の双方に不安や不満が生まれやすく、スタッフの離職や患者の離反につながる恐れがあります。清潔で手入れの行き届いた環境は、質の高い医療提供における基本条件なのです。
コスト
クリニック経営を評価する上で、コスト管理も重要な観点です。
材料費
まず材料費ですが、消耗品であるマスク、エプロン、手袋などについて、どのメーカーの製品を、どの程度の価格で購入しているかを確認します。適正価格以上の出費があれば、コスト削減の余地があることになります。
技工料
次に、技工料の適正さも評価対象です。自院の技工料が他院と比べて高額すぎないかを確認します。過剰な技工料の支払いがあれば、無駄な出費を強いられている可能性があります。
カルテ内容
カルテの適切な管理もクリニック運営において重要な課題です。汚れや破損があると、患者から不信感を抱かれかねません。患者の大切な個人情報が記載されているカルテを、ぞんざいに扱う医院には足を運びたがらないでしょう。
カルテ管理では、外観だけでなく内容面の整備も欠かせません。患者の治療歴や家族構成、アレルギー情報など、必要な内容がきちんと記載されているかを確認します。個人情報の取り扱いにも細心の注意を払う必要があり、適切な保管と管理体制が求められます。
外部との連携
紹介状の発行や地域医療連携の状況など、クリニックが外部と円滑に情報をやり取りし、必要な情報が速やかに共有されているかどうかを確認します。
スタッフレベル
クリニック運営において、スタッフの保有スキルを最大限に活用することが非常に重要です。しかし、有能なスタッフの力を十分に生かせていない場合も少なくありません。
たとえば、仮歯の作成ができる衛生士がいるにもかかわらず、外注に任せていては大きな損失を生む可能性があります。スタッフが自らのスキルを発揮したいと望んでいるのに、それを認めず外部に委託するのは無駄な出費につながります。このような状況が放置されれば、スタッフのモチベーション低下を招き、最悪の場合は離職に至るリスクもあります。
また、スタッフの説明力や自費提案力は、クリニックの売上に直結する重要な要素です。分かりやすい説明ができれば、患者の理解と信頼を得られ、自費診療の受け入れ率も高まります。
院長自身がスタッフ一人ひとりの能力や業務内容を把握することが何より大切です。スタッフの強みを正しく理解した上で、適切な指導やサポートを行えば、潜在能力が最大限に引き出され、質と生産性の向上につながるでしょう。
クリニック現場力&経営力診断サービスのメリット
クリニック経営力診断サービスは、以下のメリットがあります。
第三者による客観的な評価
経営者自身では気づきにくい課題や問題点を第三者による客観的な視点から評価できます。
新たな視点を取り入れることで、より効果的な経営改善につなげられます。
経営状況の現状把握
採用・労務環境、設備・機材、人員配置、売上、導入、マネジメント、診療、衛生環境、コスト、カルテ内容、外部連携、スタッフレベルなど、クリニック運営に関わる様々さまざまな項目を診断することで、現状の課題や強みを明確にすることができます。
また、数字やデータに基づいた分析を行うことで、客観的な視点から経営状況を把握することができ、経営者の思い込みや勘違いを防げます。
経営改善の方向性提示・経営効率の向上
診断結果をもとに、具体的な解決策を提示します。また、専門知識を持つコンサルタントによるアドバイスを受けられるため、自力では解決できない課題にも対応することも可能です。これにより、効率的な健全な経営改善が可能となり、収益の向上が期待できます。
スタッフの満足度向上
労務環境や人員配置の見直しにより、スタッフの働きやすさが向上します。これにより、スタッフの定着率が上がり、優秀な人材を確保しやすくなります。
他院の実績として、平均離職率が1年に70%だったクリニックが、診断を受け、各種見直しを行った結果、2年後には離職ゼロを達成した事例もあります。
患者満足度の向上
清潔な環境や最新の設備、スムーズな受付対応など、患者にとって安心して通えるクリニック作りが実現を目指せます。これにより、患者満足度が向上し、リピート率の向上にもつながります。
まとめ
私たちのクリニック現場力・経営力診断サービスは、医院の現状を多角的に分析し、具体的な改善提案を行うことで経営全体を大きく前進させるものです。
スタッフと患者の満足度向上を実現し、安定した経営基盤を確立するための有力なツールとなるでしょう。
一歩先を見据えた、戦略的な経営を実践したい方は、ぜひこの診断サービスをご活用ください。お客様のクリニック経営の課題発見・改善を二人三脚でサポートいたします。
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